こまつ地域未来創造塾 開講式
令和6年8月12日、こまつ地域未来創造塾の開講式が行われ、第一期の取り組みがスタートしました。
開講式には塾生のほか、西 正次氏(小松商工会議所会頭)、宮橋 勝栄様(小松市長)、原 泰希様(日本政策金融公庫 北陸地区統括)、同じく久野 暢様(日本政策金融公庫 小松支店長)やその他複数のメディアも参加して行われました。
■開会■
開会にあたり、主催者を代表して西 正次氏より挨拶があり、 続いて本プログラムの共催である金岡 省吾教授(熊本大学副学長・熊本創生推進機構 副機構長)よりご挨拶がありました。
その後来賓である宮橋 勝栄小松市長、原 泰希様、同じく久野 暢様からご挨拶をいただきました。
■覚書締結式■
熊本大学熊本創生推進機構では、和歌山県田辺市、熊本県八代市、天草市、玉名市、阿蘇地域、菊池市、山鹿市、富山県南砺市の全国8カ所において、自治体等と連携し、地場企業の若手経営者や後継者らを対象に、地域課題をビジネスで解決する人材の育成とビジネスモデルの創出を目指した「未来創造塾」を開催しています。
今回、石川県では初となる小松市においても「こまつ地域未来創造塾」を開講するにあたり、熊本大学熊本創生推進機構が有するナレッジを共有し、両者が連携して実施するため、「人材育成の連携に関する覚書」を締結することとなりました。この度の締結を契機に、「こまつ地域未来創造塾」との連携を更に強化するとともに、他の事業についても必要に応じて連携することで、新規創業、第二創業を支援していきます。
■オリエンテーション〜未来創造塾が目指すもの〜■
開講式後には早速金岡教授よりこの「未来創造塾」の成り立ちや目的に関する講義が行われました。
私は大学でランドスケープ(環境農学)を学び、シンクタンクで地域づくりに携わった後、地域課題の解決には提案だけでなく実践する仕組みが必要だと実感し、富山大学へ転身しました。 そこで「地域再生塾」を立ち上げ、その後、魚津市で「魚津三太郎塾」を実施しました。
このシステムは富山から田辺へとノウハウが移転され、さらに熊本へと波及しました。
現在では、地域再生塾の修了生「ローカルイノベーター」が地域課題に挑む姿が注目され、塾のシステムも高く評価されています。
特に、田辺市で実施されている「神島塾」は、地域の高校である神島高校と連携し、地域課題を高校生と共に考え、解決に取り組む取り組みです。この塾では、地域の「かっこいい大人」として活躍するローカルイノベーターたちが高校生に大きな影響を与えており、高校生たちは地域課題の解決に積極的に参加しています。その結果、高校生が地域に対する愛着を深め、将来的には地元に残り、地域の発展に寄与する選択をするようになるなど、若い世代の地域への関心が高まっています。
地域再生塾は、中小企業が地域課題の解決に取り組む経営戦略の重要性を示すモデルであり、支援機関と自治体が連携する経済モデルとして機能しています。また、多くの機関が未来創造塾に注目しており、その取り組みは全国的に広がりを見せています。国土形成計画の地域力醸成や関係人口の創出にも貢献しており、熊本でも田辺市の「神島塾」と同様の取り組みが展開されています。
今後は、地域のプレイヤー、支える人材、そして地域外から関わる関係人口が連携し、地域の課題解決と魅力向上に取り組むことが求められています。ローカルイノベーターの卵である皆さんが小さなプロジェクトから第一歩を踏み出し、時代を変える可能性を持って動き始めることが重要です。
■オリエンテーション〜未来創造塾で地域はどう変わる?〜■
熊本大学、熊本創製推進機構の鍋屋准教授からより具体的な事例を交えながら何故この塾を複数の塾生で取り組むことが大切なのか具体的な事例を交え紹介しました。
〈あかね材の活用〉
田辺市ではBokuMokuというプロジェクトが地域未来造像塾を通して生まれました。BokuMokuは、地域の自然資源である「あかね材」に新たな価値を見出し、地域の木材産業を再生させるために誕生した異業種ユニットです。「あかね材」は、スギノアカネトラカミキリムシによる食害を受けた木材で、強度には問題がありませんが、この食害により価格が落ちてしまった木材のことです。このユニットの結成は、たなべ未来創造塾の受講生である榎本将明さんとグラフィックデザイナーの竹林陽子さんの出会いがきっかけでした。二人は、田辺市が主催する「たなべ未来創造塾」で出会い、共に地域の資源を活用した新しいビジネスモデルを模索していました。竹林さんの「どうにかしてあかね材を活かしたい」という思いに榎本さんが共鳴し、地元の木材スペシャリスト6人が集結。こうしてBokuMokuが正式に発足しました。
このメンバーが揃ったことで、あかね材を活用した家具や小物の制作から販売まで、一貫した体制が整い、地域内での循環型経済モデルを構築することが可能となりました。また、ワークショップやイベントを通じて、地域の子どもたちや住民に木材の重要性や山の現状を 伝える活動を精力的に行っています。この活動により、あかね材の魅力が広まり、地域資源の価値が再評価されています。さらに、次世代への価値観の継承とともに、地域の活力を高めることで、地域全体の未来を支える取り組みとして、持続可能な発展に寄与することが期待されています。
〈うなぎと梅の組み合わせ〉
今まで禁断とされてきた梅とうなぎの組み合わせによる成功事例についての紹介がありました。 和歌山県田辺市で80年以上続く老舗うなぎ店が手掛けた「紀州南高梅ひつまぶし」は、かつて食べ合わせが悪いとされていたうなぎと梅干しを見事に組み合わせた商品です。こ の商品は、和歌山県の「プレミア和歌山推奨品」の「審査委員特別賞」に選ばれるなど、高く評価され、ヒット商品となりました。うなぎの価格高騰に直面し、一時はうなぎ店を続けるか悩んでいた店主は、田辺市が主催する「たなべ未来創造塾」への参加をきっかけに、地元の梅農家とのコラボレーションが実現しました。未来創造塾は、地域資源を活用して地域課題を解決する新しいビジネスモデルの創出を目指す場であり、塾での学びや参加者との交流の中で、梅とうなぎの可能性に気づきました。
「紀州南高梅ひつまぶし」は、かつお梅、こんぶ梅、しそ漬け梅の3種類を使い、「かつお梅うなぎ丼」から「昆布梅のうなぎ梅茶漬け」へと味を変えながら楽しめる工夫がされています。このアイデアも、未来創造塾での議論を通じて磨かれたものであり、塾のサポートと地域のネットワークを活かすことで、うなぎと梅というかつての禁断の組み合わせを、今や多くの人々に愛される新しい名物へと昇華させることができたのです。
鍋屋准教授はこれらの具体的な事例を示しながら、受講生同士のコミュニケーションを密にとること、そのためにはこの塾の出席率を高めていくことが非常に重要であると述べました。
■講義〜こまつ地域未来創造塾が目指すもの〜■
続いてこまつ未来創造塾の運営を運営するNPO法人Common 任田 和真氏からこの塾の目指すものというテーマでこの地域未来創造塾を通して成し遂げたい想いについて語られました。
【地域と共に作り上げる未来】
任田氏は、小松商工会議所や熊本創生推進機構の協力のもと、小松市が運営するこの未来創造塾を通して、地域に根差した人材育成を目指しています。活動の参考として和歌山県田辺市の「田辺未来創造塾」にも足を運び、小松市独自の「未来創造塾」の形を模索してきました。しかし、小松市と田辺市では産業構造や地域の特性が異なるため、同じプログラムを単純に取り入れるのではなく、「小松オリジナル」の未来を創造することが必要だと語ります。
【人口減少と立ち向かうための若者育成】
任田氏は、小松市の人口減少問題についても触れました。小松市は、2040年には人口が約8万人に減少すると予測されています。この危機に対し、若者が「帰りたい」と思える街づくりを目指すことが重要だと述べました。進学や就職で一度は地域を離れても、人生の転機に戻ってこれるような環境を整えることが、人口減少に立ち向かう一つの解決策であるとしています。
【大人が憧れる存在であるために】
「大人になりたくない」という若者が増えている現代、任田氏はその原因として、「大人になると苦労が多そう」というイメージがあると感じています。彼は、自身を含む地域の大人が「かっこいい大人」であることが、次世代にとって重要だと考えます。若者たちが希望を持って成長できるよう、未来創造塾を通じて地域の大人たちが輝いている姿を見せたいと語りました。
【未来創造塾で大切にする三つの心得】
任田氏は受講生に対し、以下の三つの心得を掲げました。
1.やる気を出すこと
2.思いや考えを口に出すこと
3.新たな挑戦を生み出すこと
「小松を明るく賑やかに」というスローガンのもと、参加者一人ひとりが自己成長を目指し、小松市全体が活気に満ちた未来へ進むことを期待しています。
■主催・来賓からのエール■
小松商工会議所会頭 西 正次 氏
地域経済の活性化のためには、地域課題の解決に取り組む担い手への支援が不可欠です。 現代は共創の時代であり、多様性が求められる時代です。時代の変化に合わせて、様々な人々と関わり合いながら進化していくことが大切だと考えています。
その中で、私たちは地域の未来を担う人材の育成に力を注いでいます。まちづくりはひとづくりから始まるという信念のもと、地域のリーダーを育て、支援することが地域全体の発展につながると信じています。
ここで特に感謝を申し上げたいのは、宮橋市長をはじめ、公庫の皆様、そして塾生の皆様です。 皆様のご支援と協力があってこそ、私たちは地域の課題に立ち向かい、未来を創造していくことができます。 これからも共に力を合わせ、地域のさらなる発展に向けて邁進していきたいと思います。
小松市長 宮橋 勝栄 様
この会議所の新たなチャレンジについて、小松市としても非常に大きな期待を持っております。北陸新幹線の開業や能登半島地震を契機に、何かを変えなければならないという思いが市内には広がっていました。そんな中、小松市ではスタートアップラボの設立など、新たな取り組みを進めています。 市としても、これからの取り組みに対して全力で応援していくつもりです。9月29日に私が登壇予定の場では、「小松市2040年ヴィジョン」についてお話しする予定です。このヴィジョンの中では、公民連携デスクを活用し、社会課題の解決に取り組むことが重要だと考えています。市としても資金協力を含め、さまざまな支援が可能です。 今回、皆さんが第一歩を踏み出されたことは非常に大きな意味を持っています。その歩みを2歩、3歩と繋げていくことで、より大きな成果が期待できるでしょう。行政には失敗が許されないという風潮がありますが、今の時代、そうも言っていられません。皆さんも、小さなトライアンドエラーを繰り返しながら、共に前進していけることを願っています。
日本政策金融公庫 小松支店長 久野 暢 様
未来創造塾が全国に広がりを見せている点について、日本公庫としても大変喜ばしく感じております。当公庫は、全国に152の支店を持ち、スモールビジネスを中心に支援を行っています。これまでにも金沢で約300社、小松で約40社に対する融資実績があり、地域経済の活性化に寄与してきました。政府出資100%の機関として、地域の中小企業を支える役割を担っていることに誇りを持っています。 未来創造塾が広がっている理由は、自明の理と言えるでしょう。地域課題の解決は、今や全国どの地域においても避けて通れない課題です。私たちは、その解決に向けて「産学官金」の「金」の部分を担い、地域の皆様と共に進んでいきたいと考えています。 また、ファーストペンギンとして未来創造塾に参加された皆様には、深い敬意を表します。皆様と共に事業プランを作り上げていくことを、私たちも心から楽しみにしており、これからの取り組みに大いに期待しています。
NPO法人Common 宮本 健一 氏
本提案を行った理由は、2年前に田辺市で開催された「たなべ未来創造塾」に参加し、地域の未来に大きな可能性を感じたことがきっかけです。この塾で、受講生たちが期をまたいで一層熱意を持ち、地域を「面」として広げていく姿勢を目の当たりにしました。その経験を通じて、私は「子どもたちが帰ってきたいと思える地域」「かっこいい大人たちが活躍する地域」を作りたいという強い思いを抱くようになりました。 自己紹介を通じて聞いた塾生たちの話からも、彼らが私たち以上に熱意を持って地域に貢献しようとしていることが伝わり、地域の未来に希望を感じました。このような受講生たちと共に、私が目指すヴィジョンは、地域で「かっこいい大人」を生み出し、雇用創出につなげることです。 例えば、越栄さんの100年企業のように、自分の強みを活かして事業を生み出し、時代の変化に柔軟に対応する姿勢が重要だと考えています。船井総研のコングロマリット戦略のように、地域に根ざしつつ多様なビジネスを展開することが、一つの
こまつ地域未来創造塾
熊本大学と小松商工会議所が共同主催し、特定非営利法人Commonが運営を行います。 小松市の産業を担う様々な業種の小規模事業者が、本プログラムを通して地域課題をビジネスで解決する手法を学び、CSV事業の創出を目指しています。